離婚と親権:親権を獲得して親権者となるためには
親権とは
親権は,身上監護権と財産管理・代理権の2つからなります。この親権を有し,未成年の子どもを養育監護する義務を負う者を,親権者といいます。「権」という名称ですが,親としての責務と切り離せないものです。身上監護権には,居所指定権,懲戒権,職業許可権のほか,第三者に対する妨害排除の権利や,子の身分上の行為の代理権などがあります。
親権 | 身上監護権 | 居所指定権 |
---|---|---|
懲戒権 | ||
職業許可権 | ||
第三者の妨害排除権 | ||
身分上の行為の代理権 | ||
財産管理・代理権 |
親権者・監護権者を指定する際の要素
婚姻中の夫婦は,共同で親権者となります。しかし,離婚の際は,いずれか一方が親権者となりますが,親権者と監護権者とを分け合うときもあります。この指定は,父母のうちいずれの者が親権者・監護権者となることが子の利益・幸せとなるかという観点から行います。ですので,親権者となるためには,子を養育できる環境を整え,その環境を継続して維持できることが大切です。
要素には,父母について,監護する意欲の強さ・能力,生活環境などが,子について,年齢・性別,意思,心身の発育状況,兄弟姉妹の関係,環境変化による影響の程度,親・親族などとの情緒的結びつきなどがあります。
監護する能力や生活環境については,同居時に自ら行っていた監護の内容・程度のほか,現在・将来にわたり親族などの補助・援助を受けることができるかも重要です。
具体的な事例
- 相手の浪費
- 消費者金融からの多額の借入れや,クレジットカードを利用した商品の換金などを繰り返ししていたなど,金銭管理能力に大きな不安があることを一つの理由として,監護権の変更を認めた事例があります(横浜家裁H21.1.6家月62-1-105[確定])。
- 相手による子どもの連れ去り
- 違法な行為で監護を開始したことについて,監護者としての適格性を評価する一事情として考慮すべきとする一方で,そのことから直ちに子の引渡しを命ずるべきではなく,あくまで子の福祉を考慮して判断すべきとしつつも,調停や裁判の結果などに反して子を奪取するなど,連れ去りの不法性が極めて顕著である場合には,子の引渡しを原則として認めてよいとした事例があります(審判前の保全処分(子の監護者の指定,子の引渡し)の事例,当該事案では顕著性を否定。甲府家裁H20.11.7家月61-7-65[抗告])。
- 別居中の相手が子どもに会わせてくれない
- 子の監護に関する処分(面接交渉)の調停・審判という手続きがあります。また,相手が決定に従わないときは,履行勧告という手続や,間接強制の申立てなどがあります。
- なお,この間接強制の場合の金銭支払額算定は,債務者の現在置かれている経済的状況や,1回あたりの面接交渉が不履行の場合に債権者に生じると予測される交通費等の経済的損失などからするとした事例があります(岡山家裁津山支部H20.9.18家月61-7-69[確定])。