親権者変更
親権者の変更とは
離婚の際に未成年の子どもがいる場合には,どちらかの親を親権者として定めることになります。ところが,その後の事情変更により,親権を変更することが子どもの利益に適う状況となることがあります。
そうした場合に利用する手続きが,親権者変更です。
具体的事例
- 親権者が死亡し祖父母が未成年後見人となっていた場合
- 親権者であった父が死亡し,父方祖母が未成年後見人となった場合であっても,母が親権者となる意思を示し,母の家族関係などからしても監護養育に適していると認められ,祖母が健康上の不安などから親権者となることを望んでいたという状況において,母が親権者となることを認めた事例があります(佐賀家裁唐津支部H22.7.16家月63-6-103[確定])。
- 親権者が死亡し未成年後見人もいなかった場合
- 親権者であった母が交通事故で死亡し,母方の伯父は未成年後見人となることを,父は親権者となることをそれぞれ希望している状況において,上記の伯父の妻が従前から子どもたちと同居していたことや,父が過去に破産していたこと,母の遺産が存在し交通事故に伴う損害賠償金の支払いも見込まれること,父が裁判手続中に母の死亡保険金を不正受領していたことなどを認定した上で,家裁・後見監督人の監督に付されることとなる未成年後見制度を利用すべきであるとして,父が親権者となることを認めなかった事例があります(札幌高裁H13.8.10家月54-6-97[許可抗告棄却],原審:函館家裁H13.6.19,許可抗告審:最高裁H13.10.30)。
- また,親権者であった母が死亡し,母方の祖母に養育監護されている状況において,父の経済・家庭環境に格別の問題はないとしながらも,上記祖母による養育監護が子どもが生まれて間もない時期から4年以上に及んでいることなどを認定した上で,父が親権者となることを認めなかった事例があります(福岡家裁小倉支部H10.2.12判タ985-259[確定])。
- 親権者が仕事の都合で祖父母に世話を委ねていた場合
- 親権者である実父が,仕事上の理由で祖父母のもとに子どもを預けている場合であっても,実父が子どもと密接に連絡を取り,子どもが祖父母宅での新しい環境に慣れ,子ども自身も環境変化を望まないとみられる状況において,実父が不在となる夜間に実母が宿泊して子どもと過ごしていたなどの事情を認めつつも,実母が親権者となることを認めなかった事例があります(さいたま家裁H22.6.10家月62-12-100[確定])。
- 離婚裁判で定められた内容に従わなかった場合
- 離婚裁判により親権を母と定めたものの,父らが子の養育監護を行い,強制執行も不奏功に終わったという状況において,養育監護が7年間に及んでいることなどを認定した上で,父が親権者となることを認めた事例があります(大阪高裁H12.4.19家月53-1-82[確定],原審:大津家裁H11.11.9)。